卓球ボールの速度はどれくらい?スマッシュ・ドライブで速さが変わる理由

卓球ボールの速度とスマッシュ・ドライブで速さが変わる理由のキービジュアル
目次

この記事の要約

シンガポール代表選手を測った研究では、フォアハンドスマッシュは時速約78〜99キロ、上回転に対するフォアハンドドライブは約66〜85キロでした。これは2000〜2001年に測定された、現在のプラスチック球とは素材が異なる40ミリ球の打球直後の速度です。卓球の体感的な速さには、球速だけでなく、相手との距離や判断に使える時間の短さも関わります。球速を上げるには、打点と下半身からの連動をそろえることが大切です。

この記事でわかること

ただし、この数字をそのまま「卓球の最高速度」と呼ぶことはできません。対象選手、球、打法、測定地点が限定された実験の範囲だからです。さらに、軽い卓球ボールは飛んでいる間に大きく減速します。卓球の速さを正しく読むには、数字の大きさよりも「誰が、何を、どこで測ったか」をそろえる必要があります。

卓球ボールの速度はスマッシュで約78〜99キロ

卓球台の横でボールと高速度カメラを確認する女性

速度の基準にしたのは、2002年に発表された40ミリ球の速度と回転を調べた研究です。シンガポール代表の男子3人、女子4人が、自分のラケットで球出し機のボールを打ちました。3台の同期カメラで毎秒200コマを撮影し、ボールの重心を3次元で解析しています。

40ミリ球について、研究が報告した打球直後の速度範囲は次のとおりです。時速は毎秒の値を3.6倍した換算値です。

打法 実測された打球直後の速度 時速への換算 測定した選手数
フォアハンドスマッシュ 毎秒21.7〜27.4メートル 約78〜99キロ 6人
上回転に対するフォアハンドドライブ 毎秒18.3〜23.6メートル 約66〜85キロ 6人
下回転に対する高い弧線のフォアハンドドライブ 毎秒12.3〜15.4メートル 約44〜55キロ 4人

この表から言えるのは、同じ実験条件ではスマッシュが最も速く、強い回転と弧線を重視したドライブは球速が低かったということです。全選手やすべての打球に当てはまる最高記録ではありません。

速度の数字には測定条件が必要です。打球直後の速度、台に着く直前の速度、区間の平均速度は別の値です。動画から求めた値と速度計の表示も、同じ条件だと確認できない限り横並びにはできません。

なお、日本卓球協会は通常の卓球ボールを直径40ミリ、重さ2.7グラムのプラスチック製と説明しています。研究で使われた球は40ミリ、平均2.67グラムでしたが、当時の球と現在のプラスチック球は素材が異なります。そのため、研究値は比較の基準にはなるものの、現在の試合球による最新記録として扱うべきではありません。

「時速100キロ以上」という数字をそのまま比べられない理由

卓球の速度を調べると、異なる数字が並びます。食い違いに見える主な原因は、測定対象と測定区間がそろっていないことです。

初速と平均速度では数字が変わる

初速は、ボールがラケットを離れた直後の速度です。平均速度は、ある区間の移動距離を所要時間で割った値です。空気抵抗で減速する卓球ボールでは、打球直後の初速が区間平均より高くなります。

前述の研究では、ドライブの一例で、打球直後から台に触れる前までの1.8メートルを飛ぶ間に、ボールの速度が約29パーセント下がりました。測定時の環境は海面付近、気温24度、相対湿度60パーセントです。どの地点の速度かを示さずに初速と到達時の速度を比べると、数字の意味が変わってしまいます。

スマッシュとドライブでは速さの配分が違う

スマッシュは、高く浮いた球を厚く捉え、前へ進む速度を出しやすい打法です。強い前進回転で台へ収める必要が小さいため、ラケットの運動を直進方向の速さへ配分しやすくなります。

ドライブは、ボールを前へ飛ばす力に加えて前進回転を作ります。回転によって軌道を曲げ、ネットを越えて台へ沈めやすくする打法です。研究でも、スマッシュは速度が高く、ドライブは速度と回転を併せ持つ結果でした。

ドライブの打ち方や、ループドライブとスピードドライブの打ち分けは、卓球ドライブの打ち方と種類で確認できます。

スマッシュのフォームを安定させたい場合は、浮いた球を決めるスマッシュの打ち方で、打点とラケット角度を確認できます。

入ってくる球と打点でも速度は変わる

同じ選手が同じ打法を使っても、相手の球速、回転、バウンド後の高さ、打点によって結果は変わります。速い上回転を利用して打つ球と、失速した下回転を自分の力で持ち上げる球では、ラケットへ入る前のエネルギーが違います。

球出し機で条件をそろえた実験値と、試合中の一球を測った値は同列にできません。用具の違いだけで速度差を説明するのも早計です。選手と入射球をそろえなければ、ラバーやラケットだけの効果を切り分けられないためです。

時速より短い体感時間が卓球を速くする

卓球台のそばでラケットを静かに構えストップウォッチを見る女性

卓球の難しさは、最高速度だけでは決まりません。相手との距離が短く、バウンドと回転を読んでから動ける時間が少ないことが、体感の速さにつながります。

台の長さで単純計算すると約0.10〜0.15秒

卓球台の長さ2.74メートルを、実測範囲の打球直後の速度でそのまま割ると、スマッシュは約0.10〜0.13秒、ドライブは約0.12〜0.15秒です。これは速度が一定で直線的に台の端から端まで進むと仮定した計算値であり、実際の到達時間ではありません。

実際の打球位置は台の端とは限りません。ボールは高さのある軌道を描き、空気抵抗を受けて減速した後、相手コートに一度バウンドします。それでも、見てから考え、足を動かし、ラケット面を作るまでの余裕がごく短いことはわかります。

反応時間はボールの飛行時間より短い

選手が使える時間は、打球から到達までの全時間ではありません。相手のインパクトを認識し、コースと回転を判断する時間が必要です。さらに、自分の打点より前にスイングを始めなければなりません。

そのため、速い球への対応は反射神経だけでは解決しません。相手の肩、肘、ラケットの向きから早く情報を取る方法は、卓球の動体視力と反応速度を鍛える視線術で詳しく確認できます。

前陣では球速が同じでも速く感じる

台に近い位置で打たれると、ボールが届くまでの距離が短くなります。初速が同じでも到達時間は短くなるため、相手には速く感じられます。反対に、後陣からの強打は打球直後が速くても、長く飛ぶ間に減速し、見る時間が増えます。

「球速を上げる」以外にも、打点を早める、相手の近くで返す、コースを散らすことで時間を奪えます。前陣で相手の威力を利用する考え方は、カウンターの打ち方と練習方法につながります。

速いボールを出す条件は強く振ることだけではない

同じ条件で繰り返し測定するためカメラとボールを準備する女性

球速を上げたいときは、腕力だけでなく、打点、体の連動、ラケット面をそろえる必要があります。力んでスイングの再現性を失うと、速度計の数字が上がっても試合で使える球にはなりません。

高い打点では前へ振りやすい

スマッシュは、ネットより十分に高い打点なら、強い弧線を作らなくても相手コートを狙えます。ラケットを前へ振り抜き、厚く当てやすいため、直進方向の速度が出ます。低い球を同じ角度で強打するとネットミスが増えるので、球の高さに応じてスマッシュとドライブを選びます。

下半身から順に動きをつなぐ

足で床を押し、腰、肩、腕の順に動きを伝えると、ラケットを加速させやすくなります。腕だけを急に振ると打点がずれ、面が不安定になります。球速を測る練習でも、まず同じコースへ入る打球を残し、その中で速度を比較することが大切です。

腕だけで振ってしまう癖を直したい場合は、手打ちを直す原因チェックと矯正ドリルで足から打つ感覚を確認できます。

速度だけを練習目標にしない

試合で効果を発揮する速さは、速度、回転、コース、打点の早さの組み合わせです。最速の一球が入る確率より、相手の準備時間を奪う球を繰り返し入れられるかが得点を左右します。

測定するなら、同じ球出し、同じ打点、同じ測定位置で複数球を記録します。最高値だけでなく、入った球の中央値やばらつきも見ると、実戦で使える速度がわかります。

卓球の速度データを読むときの確認項目

速度の数字を見つけたら、次の項目を確認します。1つでも不明なら、別条件の数字との比較は保留にします。

  • ボールは38ミリ球、40ミリのセルロイド球、現在のプラスチック球のどれか
  • 対象は代表選手、競技者、初心者、球出し機のどれか
  • 打法はスマッシュ、ドライブ、サーブのどれか
  • 打球直後、バウンド前、一定区間の平均のどれを測ったか
  • 速度計、高速度カメラ、動画のコマ数など、測定方法は何か
  • 成功した一球の最高値か、複数球の平均や範囲か
  • 入ってくる球の速度と回転をそろえたか

前述の実測研究は、選手、球、球出し、撮影速度、測定地点が示されています。一方で、2000年から2001年に集めた40ミリ球のデータで、現在のプラスチック球を測ったものではありません。公開時には、現在の試合球を同等の方法で測った一次資料がないか再確認します。

よくある質問

卓球ボールの最高速度は時速何キロですか?

条件をそろえて認定された1つの「世界最高速度」は、この記事で確認した一次資料からは示せません。代表選手を対象にした研究では、40ミリ球のフォアハンドスマッシュの打球直後が毎秒21.7〜27.4メートル、換算で約78〜99キロでした。この実測範囲を競技全体の最高記録へ置き換えないことが大切です。

スマッシュとドライブはどちらが速いですか?

同じ研究条件ではスマッシュのほうが速い結果でした。スマッシュは前へ進む速度を出しやすく、ドライブは前進速度に加えて回転を作るためです。ただし、選手、入射球、打点が違えば個々の打球の順位は入れ替わります。

卓球ボールは飛んでいる間も同じ速度ですか?

同じではありません。卓球ボールは軽く、空気抵抗で減速します。紹介した研究では、ドライブの一例で打球後1.8メートルを飛ぶ間に速度が約29パーセント低下しました。初速と到達時の速度を区別します。

時速を出すには毎秒の数字をどう換算しますか?

毎秒のメートル数を3.6倍すると、時速のキロメートル数になります。たとえば毎秒20メートルは時速72キロです。換算しても測定地点や打法の条件は変わらないため、数字と一緒に条件を残します。

卓球が球速以上に速く感じるのはなぜですか?

相手との距離が短く、ボールの飛行中にコースと回転を判断し、体を動かす必要があるからです。前陣では移動距離がさらに短くなります。相手の打球後だけを見るのではなく、インパクト前の動作から予測することが欠かせません。

プラスチック球と昔のセルロイド球は同じ速度ですか?

素材や製品条件が違うため、同じだとは断定できません。紹介した実測値は2000年から2001年に集めた40ミリ球のデータです。現在のプラスチック球による測定値と比べるときは、球以外の条件もそろっているか確認します。

自分のスマッシュ速度はどう測ればよいですか?

速度計や十分なコマ数の動画を使い、測定位置を固定します。同じ球出しと打点で複数球を測り、成功球だけを比較してください。機器や撮影条件による誤差があるため、異なる方法で測った他人の数字より、自分の同条件での変化を見る用途に向いています。