体育館の熱中症対策|卓球部が窓を閉める理由とWBGTで決める中止基準

体育館の熱中症はWBGT31以上で原則中止であることを中止テープで示したキービジュアル
目次

この記事の要約

体育館での練習を続けるか中止するかは暑さ指数(WBGT)で判断し、31以上なら運動は原則中止です。31未満でも28以上なら激しい運動は中止、暑さに弱い人は運動を軽減または中止し、10〜20分おきに休憩して水分と塩分を補給します。卓球ではボールに風を当てないよう窓や送風の向きを調整することがありますが、換気や冷房を犠牲にしてよいわけではありません。屋内の算出式は湿球温度と黒球温度を組み合わせるもので、湿度だけで危険度は決まりません。日射がないだけで安全とは言えないので、出かける前の予測確認に加え、練習場所でも暑さ指数を測ってください。

この記事でわかること

卓球は自分で暑い環境を作っている

窓が閉め切られ扇風機が止まった夏の体育館で、汗をタオルで拭う男性

卓球のボールは直径40mm、重さ2.7g程度しかありません。ボールへの風の影響が気になるときは、送風の向きや台の位置を調整します。競技のために換気や冷房をすべて止めることを必須条件にはせず、安全に練習できる温熱環境を先に確保してください。

風への対処として、夏の体育館で次のような調整が行われることがあります。

  • 窓を閉める
  • 扇風機を止める、あるいは台に風が当たらない向きにする
  • 空調があっても送風を弱める

これらの調整は、冷房や換気を保ち、練習場所の暑さ指数を確認できる範囲で行います。風が吹いていてはドライブやサーブが安定しません。しかし暑熱環境として見ると、空気の流れを止めて湿気を閉じ込めるという、最悪に近い条件を自分たちで作っていることになります。

風への配慮と暑さ対策を両立する
他競技との比較だけで体育館の安全性は判断できません。卓球でも送風を直接台に当てない工夫と、冷房や換気の確保を合わせて考えます。風を抑えるために暑さ指数が高くなるなら、窓を閉めたまま続けるのではなく、練習の中止や涼しい施設への変更を選んでください。

屋内の暑さ指数は湿度や熱で変わる

熱中症の危険度を測る指標に暑さ指数(WBGT)があります。気温だけでは蒸し暑さを評価できないため、湿度や輻射熱も含めて算出するものです。

ここでは、屋外と屋内で計算式が違うという点を押さえることが重要です。環境省の暑さ指数の解説には、次のように示されています。

場所 算出式
屋外 WBGT = 0.7×湿球温度 + 0.2×黒球温度 + 0.1×乾球温度
屋内 WBGT = 0.7×湿球温度 + 0.3×黒球温度

湿球温度は空気の湿り具合を示す温度です。湿度が高いときには乾球温度(いわゆる気温)に近づき、湿度が下がるほど低くなります。黒球温度は、黒く塗装した中空の銅球を使って測ります。輻射熱の強さを表す値です。

つまり屋内の式では、湿球温度に0.7、黒球温度に0.3を掛けます。湿球温度は気温と空気の乾き具合を反映する測定値であり、0.7を「湿度だけの影響が7割」という意味には読み替えられません。日射が入らなくても、気温や湿度、周囲から受ける熱によって暑さ指数は高くなります。

「屋内だから安全」が成り立たない理由
屋根が日射を遮っても、屋根や壁などからの輻射熱がなくなるわけではありません。黒球温度は屋内でも測る必要があり、式の0.3の項が取り除かれるという意味でもありません。湿球温度には気温も関わるため、窓の開閉だけで安全性を判断せず、冷房や換気の状態と現場の測定値を確認してください。

中止の基準はすでに数値で決まっている

「まだいける」「気合いが足りない」といった感覚で判断する必要はありません。日本スポーツ協会が暑さ指数に応じた運動指針を公表しており、環境省のマニュアルにも掲載されています。

暑さ指数(WBGT) 区分 指針
31以上 危険 運動は原則中止。特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき
28以上31未満 厳重警戒 激しい運動は中止。激しい運動や持久走など体温が上昇しやすい運動は避ける。10〜20分おきに休憩をとり水分・塩分を補給する。暑さに弱い人は運動を軽減または中止
25以上28未満 警戒 積極的に休憩。積極的に休憩をとり適宜、水分・塩分を補給する。激しい運動では、30分おきくらいに休憩をとる
21以上25未満 注意 積極的に水分補給。熱中症の兆候に注意するとともに、運動の合間に積極的に水分・塩分を補給する

出典は日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」第6版の運動指針です。2026年10月7日に確認しました。21未満は「ほぼ安全」ですが、適宜水分・塩分の補給が必要で、市民マラソンなどではこの条件でも熱中症が発生するとされています。

注目すべきは21以上25未満の「注意」区分にも、熱中症による死亡事故が発生する可能性があると書かれている点です。指数が低ければ何をしてもよい、という指針ではありません。

顧問や保護者に伝えるときの言い方
「暑いからやめたい」ではなく「暑さ指数が31以上なので、日本スポーツ協会の指針では原則中止に当たります」と数値で伝えてください。指針は公的機関が公表しているもので、個人の感覚ではありません。特に子どもについては中止すべきと明記されています。

熱中症が疑われるときの手当て

基準を守っていても起きるときは起きます。手順を知らないまま現場にいるほうが危険です。 厚生労働省の応急処置案内を踏まえ、対処を次の4項目に整理します。最初に呼びかけへの反応を確認し、意識がおかしい、自力で水が飲めない場合は直ちに119番で救急要請します。下の項目を順番に終えてから呼ぶのではなく、通報と冷却を並行して進めてください。

1. 涼しい場所へ移して、服をゆるめる

体育館の中で休ませるのではなく、空調の効いた部屋や風の通る日陰まで移動させます。上着を脱がせ、ベルトや襟元をゆるめて熱を逃がします。

2. 首・わきの下・太もものつけ根を冷やす

氷のうや冷たいペットボトルがあれば、この3か所に当てます。太い血管が通っている場所を集中的に冷やすのが効率的です。全身に水をかけて扇ぐのも有効です。

3. 水分と塩分を同時にとらせる

意識がはっきりしていて、自分で飲み込めることを確認します。大量に汗をかいた場合は、スポーツドリンクなど塩分を一緒にとれるもので水分と塩分を補います。経口補水液を使う場合は、製品の表示や持病に関する注意も確認してください。

吐いている、意識がはっきりしない場合は、無理に飲ませないでください。気道に入る危険があります。

4. この3つのどれかに当てはまったら救急要請

  • 自分で水分がとれない
  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • まっすぐ歩けない

このいずれかがあれば、様子を見ずに119番で救急要請し、到着を待つ間も体を冷やします。自力で移動させるかを迷って通報を遅らせず、救急隊の指示に従ってください。

部活動なら、この4手順を顧問だけでなく部員全員が知っている状態にしておいてください。体調不良は顧問がそばにいない場所でも起こり得ます。部員同士で声をかけ、誰が通報し、誰が冷却するかを練習前に決めておくと、発見した人がすぐ動けます。

出かける前に暑さ指数を調べる

真夏の体育館入口でスマートフォンの画面を確認する男性

暑さ指数は体感では分かりません。幸い、環境省が熱中症予防情報サイトを運用しており、全国約840地点の実況値と予測値を公開しています。予測値は今日・明日・明後日の3日分で、3時間刻みの時刻ごとの値を確認できます。サイトの値は体育館内の実測値ではないため、練習の可否は現場の測定も合わせて判断します。

練習の予定を立てる前にこのサイトを開けば、「明日の午後は31を超えそうだから午前に前倒しする」といった判断ができます。

また、危険性が極めて高いと予測されたときには熱中症警戒アラートが発表されます。発表時刻や期間は環境省の運用指針で確認できます。

  • 発表基準: 対象地域内の算出地点のいずれかで、日最高暑さ指数を33以上と予測した場合
  • 発表タイミング: 前日の17時頃、および当日の5時頃
  • 対象となる地域の単位: 全国を58に分けた府県予報区等
  • 情報提供の期間: 概ね4月第4水曜日から10月第4水曜日まで。年度ごとの開始・終了日時は公式の案内で確認する

前日17時に出るということは、練習の前夜に判断材料が手に入るということです。当日の朝になって慌てる前に、確認する習慣をつけてください。

なお環境省の熱中症環境保健マニュアルは、急に暑くなったときや暑さに慣れていない時期への注意を求めています。危険な時期を暦だけで決めず、梅雨明けや休み明けなどに運動を再開するときは、暑さ指数と本人の体調を確認し、練習の量や強度を調整してください。

練習の組み立てで減らせる負荷

体育館のベンチでタオルを首にかけ、ペットボトルの水を飲んで休憩する女性

環境そのものを変えられない場合でも、練習の設計は変えられます。指針が示す休憩の頻度を、卓球の練習に当てはめて考えてみます。

暑さ指数が28以上31未満なら10〜20分おき、25以上28未満なら激しい運動で30分おきの休憩が目安です。卓球の練習に置き換えると、次のような組み替えが現実的です。ただし31以上なら原則中止を優先し、台上練習への変更だけで続行する判断にはしないでください。

  • 多球練習を涼しい時間帯に寄せる: 動きが大きく心拍が上がりやすいメニューは、指数が上がる午後を避けて午前に置く
  • 指数が高い時間帯は台上のメニューに切り替える: サーブ練習やツッツキ、レシーブの確認は移動量が少なく済みます
  • 休憩を「タイマーで」区切る: 感覚に任せると、集中しているときほど休憩を飛ばします
  • 人数が多い日はローテーションを短くする: 台に入っている時間を短くすれば、自然に休む時間が確保できます

技術的なメニューの組み方そのものは卓球の練習メニューにまとめています。

体に異常を感じたとき
気分が悪い、頭が痛い、まっすぐ歩けないといった変化があれば、その時点で練習を止めて涼しい場所へ移動してください。判断に迷う状態であれば、迷っている本人ではなく周囲が止める必要があります。意識がはっきりしない、自力で水分がとれない場合はすぐに119番で救急要請します。冷却や水分補給で改善しない場合も、速やかに医療機関の診療を受けてください。ここで扱えるのは公的機関が公表している基準までで、症状の見分け方や処置は医療の領域です。

夏を越えるための現実的な選択肢

窓を閉めた体育館という条件そのものを変えられるなら、それが最も効果のある対策です。

空調の入った民間の卓球場を夏場だけ使う、という選び方は現実的です。施設タイプごとの料金の考え方や探し方は卓球ができる場所はどこかに、球出しマシンのある施設については卓球マシン練習場の選び方にまとめています。

湿度が高い環境ではラバーの表面やボールに水滴が付き、回転がかかりにくくなる問題も起きます。技術面の対処は悪条件の試合会場で勝つための方法にまとめています。

よくある質問

体育館は屋内なのに、なぜ熱中症になるのですか?

暑さ指数の屋内の算出式は「0.7×湿球温度+0.3×黒球温度」です。0.7は湿球温度の係数であり、湿度だけが危険度の7割を決めるわけではありません。日射を遮っても屋根や壁からの輻射熱は残ります。窓や送風を調整するときも冷房や換気を確保し、体育館内で暑さ指数を測ってください。

練習を中止する基準はありますか?

日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針では、暑さ指数31以上を「危険」として運動は原則中止、特に子どもの場合には中止すべきとしています。28以上31未満は「厳重警戒」で激しい運動は中止です。感覚ではなく、この数値を基準にしてください。指数は環境省の熱中症予防情報サイトで確認できます。

誰かが倒れたら、まず何をすればいいですか?

まず呼びかけへの反応と自力で水分を飲めるかを確認し、反応がおかしい、飲めない場合はすぐに119番で救急要請します。通報と並行して涼しい場所へ移し、服をゆるめ、首・わきの下・太もものつけ根を冷やします。意識がはっきりして自分で飲み込める場合に水分を補給し、大量に汗をかいたときは塩分も補ってください。吐いている場合や意識がはっきりしない場合は、無理に飲ませないでください。自分で水分がとれない・呼びかけへの反応がおかしい・まっすぐ歩けないのいずれかがあれば、様子を見ずに救急要請します。

暑さ指数はどこで確認できますか?

環境省の熱中症予防情報サイトで、全国約840地点の実況値と予測値が公開されています。今日・明日・明後日の3日分について3時間刻みの予測値を確認できるため、練習計画を立てる段階で使えます。体育館内の値とは異なるので、現場でも測定してください。危険性が極めて高い場合は、日最高暑さ指数33以上の予測で熱中症警戒アラートが前日17時頃と当日5時頃に発表されます。

真夏より梅雨明け直後のほうが危ないと聞きました。本当ですか?

環境省の熱中症環境保健マニュアルは、急に暑くなったときや暑さに慣れていない時期への注意を求めています。梅雨明け直後を真夏全体より危険と一律に比べることはできませんが、暑熱順化が十分でない時期には練習量や強度を調整する必要があります。夏の後半だから安心という考え方も、逆に前半なら大丈夫という考え方も成り立ちません。

無料体験お申し込みはこちらから

\今だけ体験レッスン無料!/