SUMMARY
この記事の要約
ミスを引きずらないカギは才能ではなく、ミス直後の「次の一言(セルフトーク)」をあらかじめ決めておくことにあります。「またやった」「もう終わりだ」という自責は次のミスを呼びやすく、ミス後に使う短い言葉を決めておくと、意識を次のプレーへ向けやすくなります。自分には修正点を1つだけ伝える言葉をかけ、ダブルスのペアには挑戦を肯定しつつ次の役割を示します。試合で自然に出るよう、練習中からミスのたびに一言を声に出して慣れておいてください。
この記事でわかること
フレーズは用途別に3種類あります。
- 自分にかけるセルフトーク3型 — 技術フォーカス型・リセット型・チャレンジ肯定型。1本のミスを次の1本の修正点に変える具体フレーズを状況別に用意する
- ダブルスのペアへの声かけ — 責めず、チャレンジを肯定し、次の役割を明確にする。ペアが即座に前を向けるワンセット例を収録
- ベンチからの言葉の使い分け — 選手の状態に合わせ、落ち着くための言葉と次の行動を示す短い助言を選ぶ考え方
卓球の指導現場で実践されているメンタルスキルをもとに、本番にそのまま使える台本として持ち帰ってください。
なぜ卓球はミスを「引きずる」のか

ミスを引きずってしまうのは、メンタルが弱いからではありません。1本失点した瞬間に「またやった」「もう終わりだ」と自分を責める思考が始まり、その自責が次のプレーへの集中を奪い、さらにミスを呼ぶ。この自責の連鎖が連続失点を生む仕組みこそが、引きずる正体です。
しかも卓球はラリーの間隔が短く、考え込む時間がほとんどありません。無言でラケットを見つめている数秒のあいだに、ネガティブな思考だけが頭の中で堂々巡りになります。
この連鎖を断ち切るのがセルフトークです。セルフトークとは、心の中や口に出して自分に語りかける言葉のこと。スポーツ心理ではメンタルスキルのひとつとして広く扱われ、卓球の指導現場でも気持ちの切り替え手段として定着しています。要は「ミス直後に何を言うか」をあらかじめ決めておくだけで、思考が次の1本へ向かい、引きずりが止まります。
ミスそのものを恐れない考え方についてはミスを恐れない考え方は『強い人ほどミスを恐れていない』で詳しく解説しています。本記事はその先、「具体的に何という言葉を口にするか」に絞って進めます。
ミス直後の3秒が試合の流れを左右する

ミスをした直後の最初のひと言、つまり最初のセルフトークが、その後のプレーに直結します。「自分の意欲を失わせる言葉」を選ぶか、「次につながる言葉」を選ぶかで、試合の展開は全く異なるものになります。
このようなネガティブな発言は、技術やメンタルの向上には一切つながりません。
逆に、あらかじめ「ミス直後の次の一言」を決めておけば、失点しても心が崩れなくなります。気持ちの切り替えを「そのとき頑張る」に頼ると再現できませんが、言葉として準備しておけば本番でも自動的に発動します。
まずは、絶対に避けるべきNGワードから確認していきましょう。
試合の流れを悪くするNGワード
試合の流れを自分から断ち切ってしまう、無意識の避けたい言葉が存在します。
- 「ああもう無理」「今日はダメな日だ」
- 「また同じミスかよ」
- (ダブルスでペアに対して)「今のボールは取ってよ」
これらの言葉には、3つの共通点があります。
- 自分や相手の評価を下げて終わっている
- 技術的な修正のヒントが1つも含まれていない
- 聞いた人のモチベーションを確実に下げる
一発逆転のスーパーショットを狙うよりも、このようなネガティブな一言のほうが試合を壊す原因になります。卓球は怒りなどの感情を露わにすると冷静な判断ができなくなり、勝機を逃します。
まずは「自分がやりがちなNGワード」を自覚することが、冷静さを保つ第一歩です。ここからは、具体的にどんな言葉に置き換えるべきかを見ていきます。
自分にかける次の一言セルフトーク3型

ここからが実践編です。ミスを「次の1本へのヒント」に変えるセルフトークを準備しておきます。自分にかける言葉は、大きく3つの型に分けられます。
技術フォーカス型
ミスの原因を1つだけ切り取り、次のプレーにつなげる言葉です。
- 「今のは打点だけ前にする」
- 「弧線が高かった。次はネット1枚分低く狙う」
- 「回転は問題ない。コースだけクロスに寄せる」
ポイントは「原因をすべて口に出さない」ことです。フォーム、タイミング、コース、回転などを一度に反省すると頭がパンクします。毎回1ポイントだけに絞るのが基本的な方法です。
リセット型
悪い流れを一度止め、心理状態をニュートラルに戻す言葉です。
- 「はい、ここから集中」
- 「1本ずつ着実にいこう」
- 「ドンマイ、次いこう」
これはおまじないとして機能します。言葉の具体的な内容よりも、常に同じ言葉を使うことが重要です。自分だけの決めフレーズを持つことで、気持ちの切り替えスイッチが入りやすくなります。決めフレーズは、決めフレーズをサーブ前ルーティンに組み込む方法のようにルーティン化すると、さらに発動が安定します。
チャレンジ肯定型
攻める気持ちを維持したまま、微修正を加えたいときの一言です。
- 「選択は正解、コースだけ変えよう」
- 「今の攻め方は続ける。精度だけ上げる」
- 「今のは問題ない。次に入れば確実に得点パターンになる」
ここで「やっぱり守りに入ろう」と弱気になると、せっかくの攻撃的な展開が消滅します。攻める姿勢は崩さず、「次にどう上書きするか」を言葉にします。
何がダメだったかではなく、次に何をするかを端的に声に出します。ダメ出しは一瞬でメンタルを削りますが、具体的な次の行動を示す言葉は、すぐに体を動かす原動力になります。
セルフトークから「次の1本の修正」へ|凡ミスを減らす思考
セルフトークで気持ちを切り替えたら、その勢いのまま具体的な技術修正へつなげます。ここを意識できると、メンタルの切り替えがそのまま凡ミスを減らす思考に変わります。
コツは、修正点を1点だけに絞ること。卓球の凡ミスは、打点・回転・コース・力加減といった複数の要因が重なって起きますが、ラリー中に全部を直そうとすると体が固まり、かえってミスが増えます。
- 直前のミスを思い出し、原因を「打点が遅れた」など1語で言語化する
- 次の1本では、その1点だけを意識して入れにいく
- 入ったら同じ意識を継続、外したら別の1点に切り替える
「言葉で落ち着く→修正点を1つに絞る→次の1本で試す」というループにすると、感情に流されず淡々とミスを減らせます。ミスが続いて流れごと失ってしまったときは、言葉だけでなく行動での立て直しも有効です。ミスが続いて流れを失ったときの立て直し行動もあわせて使い分けてください。
呼吸を組み合わせると切り替えはさらに速くなります。言葉と一緒に呼吸で緊張をコントロールする4-7-8呼吸法なら、生理面からも平常心を取り戻せます。
ダブルス&ベンチからの声かけ
自分のメンタルコントロールに慣れてきたら、次は「パートナーやチームメイトのメンタルを守る」ステップに入ります。声をかける相手が変わっても、原則は同じです。責めずに、次の役割を明確にします。
ダブルスでペアがミスしたときの声かけ
ペアにかける一言で、ダブルス全体の雰囲気は一瞬で変化します。
- 「攻め方は間違っていない」
- 「ナイスチャレンジ。次は自分がここをカバーする」
- 「いい展開。その思い切りは続けよう」
単に褒めるのではなく、「チャレンジ自体を肯定すること」と「次の役割を明確にすること」が不可欠です。この2つが揃うことで、ペアはすぐに前を向いてプレーを再開できます。
会話のワンセットとしては以下が理想的です。
- 選手A「ごめん、またレシーブが浮いた」
- 選手B「問題ない、回転は読めている。次はフォア側だけ切ろう」
相手を責めるのではなく、「状況の整理と次の一手」を1回のやり取りで完結させます。
ベンチからの一言(中高生〜一般プレーヤー向け)
ベンチからかける言葉は、細かい技術指導よりも心拍数を下げるための働きかけと捉えるとうまくいきます。
- 「その攻め方で問題ない」
- 「ミスは気にしなくていい。いつも通りのプレーでいこう」
- 「丁寧に、自分から仕掛けていこう」
ベンチからの言葉に、誰にでも当てはまる最適な割合は確認されていません。選手が焦っているときは落ち着く言葉を、何を直すか迷っているときは短い技術的な助言を選びます。
選手が冷静さを取り戻せば、自然と本来の動きができるようになります。ベンチの言葉が二転三転すると選手はかえって混乱するため、ベンチからのアドバイスに迷ったときの考え方も参考に、伝える内容を1つに絞ってください。
練習でセルフトークを「口癖」にインストールする

本番の緊張状態のなかで、いきなりポジティブな言葉は出てきません。普段の練習メニューのなかで、技術と一緒に「セルフトークのトレーニング」も行います。
ミスしたら必ず一言発するルール
- ゲーム練習中、ミスをした瞬間に必ず何か言葉を発する(「次、次」「打点前」「問題ない」など)
- 内容は深く考えず、とにかく自分の外に声を出す癖をつける
無言のままラケットを見つめているだけでは、ネガティブな思考が堂々巡りになります。声に出すことで、頭の中の思考回路が一段階切り替わります。
自分専用のフレーズリストを作る
- 練習後に「今日使ってしっくりきた一言」を3つノートに記録する
- その中から、本番の試合で使うお気に入りワードを2〜3個に絞り込む
「今のは打点だけ前」といった論理的な言葉でも、「ここからが本番」といった熱い言葉でも構いません。もっとも大切な基準は、自分のテンションが上がる言葉になっているかどうかです。
まとめ:言葉で試合の流れをデザインする

卓球において、どれだけ技術が向上してもミスがゼロになることはありません。しかし、ミス直後の「次の一言」によって、試合の流れはある程度コントロールできます。
- 自分自身には「次にやること」を短く的確に伝える
- 技術修正は1点だけに絞り、凡ミスの連鎖を止める
- ダブルスのペアには「責めずに役割を明確にする」
- コーチやベンチは選手の状態を見て、安心につながる言葉と短い技術的助言を使い分ける
まずは今日から、「ミスをしたらこの一言だけは言う」というセルフトークを1つ決めて、日々の練習や試合で実践してください。それが確固たる勝てる口癖として定着したとき、ミスを引きずらない切り替えの速さは間違いなく一段階上がります。
力強いスイングを身につけることも大切ですが、その直後に何をつぶやくかも勝敗を分ける重要な要素です。その小さな一言が、試合の流れを確実に引き寄せてくれます。
よくある質問
卓球でミスを引きずってしまうのを防ぐには?
ミス直後に口にする「次の一言(セルフトーク)」をあらかじめ決めておくのが有効です。無言で考え込むとネガティブな思考が堂々巡りになります。「はい、ここから集中」「打点だけ前」など、原因を1点に絞った短い言葉や毎回同じリセット用フレーズを声に出してください。思考が次の1本へ切り替わり、自責の連鎖による連続失点を防げます。
セルフトークとは何ですか?卓球でどう使う?
セルフトークは、心の中や口に出して自分に語りかける言葉のことです。卓球ではミスや劣勢の場面でマイナス思考に傾きやすいため、あらかじめ前向きで具体的な言葉を準備しておき、それに置き換えます。ポイントは反省点を全部口にせず、次にやることを1つだけ短く言うこと。これにより気持ちと体がすぐ次のプレーへ向かいます。
ダブルスでペアがミスしたとき、どんな声かけが正解?
相手を責めず、チャレンジ自体を肯定したうえで次の役割を明確にするのが基本です。「攻め方は間違っていない。次は自分がここをカバーする」のように、状況の整理と次の一手を1回のやり取りで完結させます。単に褒めるだけでなく役割を示すことで、ペアはすぐ前を向いてプレーを再開できます。
ベンチや指導者からの声かけは技術指摘を多くすべき?
試合中のベンチからの言葉は、技術指摘よりも選手を落ち着かせることを優先します。安心させる言葉と技術的指摘の割合を固定せず、選手の状態に合わせて選びます。セルフトーク研究のレビューでは、励ます言葉と技術の手がかりになる言葉の効果は課題によって異なります。ただし、自分への言葉を調べた研究であり、ベンチの助言の最適比率を示すものではありません。心拍数を下げ冷静さを取り戻させれば、選手は本来の動きを自分で取り戻せます。細かい技術修正は試合後の練習で扱うほうが効果的です。