SUMMARY
この記事の要約
卓球は4.0メッツの中強度運動で、ラリーを楽しむ形なら走らずに済み、体力に合わせて負荷を調整できます。週1回90分で高齢者の目標である週15メッツ・時の4割に届くので、残りは日常の歩行などと組み合わせます。転倒予防や骨、認知機能への効果は関連研究や公的資料からの推測にとどまり、卓球単独で確かめられたわけではありません。膝や腰に痛みがある場合や持病がある場合は、始める前に主治医へ相談してください。
この記事でわかること
階段で息が切れる。玄関の段差でつまずく。健康診断の数字が去年より悪くなっている。60代を迎えた女性が運動を探し始めるきっかけは、たいていこのあたりにあります。
ところが、ジムのマシンは3回で飽き、ウォーキングは雨の日に途切れ、体操教室は足が遠のく。続かなかった理由を自分の意志の弱さに求めてしまう人は少なくありません。
その代わりとしてよく名前が挙がるのが卓球です。ただし「シニアに良い」と書かれた記事の多くは、根拠となる数値を示さないまま効果を並べています。卓球は実際どれくらいの強度の運動なのか。週に何回やれば国の基準に届くのか。膝や腰が不安な人でも本当にできるのか。公的機関が公開している数値を1つずつ当たって確認しました。
記事中の数値は、2026年8月時点で各機関が公開している資料によります。基準や統計は改定されるため、判断の分かれ目になる数字は出典元で最新版を確認してください。
膝や腰が不安でも卓球を始められる3つの理由
効果の話より先に、多くの人がつまずく「そもそも自分にできるのか」から片づけます。

走る必要がなく、動く範囲を自分で決められる
卓球台のプレーイングサーフェスは、日本卓球ルールで長さ2.74m、幅1.525m、床上76cmと決められています。守るべき範囲は幅1.5mほどの台とその外側だけです。
ラリーを楽しむ目的なら、左右に数歩動けば大半の球に届きます。ボールを追って全力で走る場面は、競技志向の練習をしない限り出てきません。走る・跳ぶ・急停止するという、膝と腰に負担のかかる動作を避けたまま成立します。
そして球の速さは打ち合う二人が決めます。相手がゆっくり返せばラリーもゆっくりになります。強度を自分側で下げられる点は、体力に自信がない段階では大きな意味を持ちます。
相手とぶつからない競技構造
卓球はネットを挟んで別々のコートに立ちます。競技の構造上、相手と接触する場面がありません。
体の向きを変えながら人とすれ違うタイプの運動では、接触による転倒が起こります。卓球にはその要素がないため、けがの入口が1つ減ります。
座ったままでも成立する
卓球は立てなければできない運動ではありません。医療機関や福祉施設で「卓球療法」として使われています。
特定非営利活動法人日本卓球療法協会は、卓球療法を「卓球の用具を活用し、心身の健康の維持・向上・予防を図る方法」と定義しています。実施場所は福祉施設・医療機関・学校・公共施設・卓球場で、経験者の職員がいる場合は座位や立位でのラリーを行います。経験者がいない場合でも、マシンによる球出し、卓球バレー、的当て、球つきといった形で成立します。
ここで挙げた卓球療法は、身体疾患や精神疾患のある方、障害児を主な対象とした取り組みです。膝や腰に不安があるだけの人がそのまま当てはまるわけではありません。ただし、立位や走行を前提にしなくても卓球が成立するという事実は、そのまま参考になります。
この記事で扱う「卓球」の範囲
ここで前提にしているのは、ラリーを続けることを目的にした運動としての卓球です。試合形式で勝敗を競う競技卓球は、動きの強度も切り返しの負荷も変わります。持病がある場合や痛みが出ている場合は、始める前に主治医へ相談してください。
シニア女性が卓球で得られる健康効果7つ
効果を並べる前に、数値の土台を1つ置きます。
卓球の運動強度は4.0メッツです。医薬基盤・健康・栄養研究所と産業技術総合研究所が作成した「改訂第2版 身体活動のメッツ(METs)表 成人版」に、卓球(Table tennis, ping pong)として4.0と記載されています。厚生労働省は3メッツ以上を中強度としているため、卓球は中強度の身体活動に分類されます。
この記事が成人版の数値を使う理由
メッツ表には60歳以上を対象にした高齢者版(MET60+)もあります。安静時代謝を成人版の3.5mL/kg/分ではなく2.7mL/kg/分として計算する表で、加齢に伴う安静時代謝の低下を反映したものです。ただし高齢者版に収録された活動は99個で、成人版の1,111個に対して大幅に少なく、スポーツ欄に卓球の記載はありません(掲載されているのはゴルフだけです)。そのため、この記事の数値はすべて成人版によります。
この4.0という数字を軸に、7つの効果を見ていきます。
1. 下肢の筋力を保つ
ラリー中は立ちっぱなしで、左右への重心移動と膝の曲げ伸ばしが絶えず入ります。座っている時間がほぼゼロになる点が、日常生活との最大の違いです。
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、高齢者に対して座位行動の時間が長くなりすぎないよう注意することを推奨事項に挙げています。1時間の卓球は、その1時間を確実に立位で埋めます。
2. バランス能力と転倒予防
転倒は他人事ではありません。公益財団法人長寿科学振興財団の機関誌『Aging&Health』No.100に、東京都健康長寿医療センター研究所の大須賀洋祐氏による報告が掲載されています。地域高齢者の少なくとも3人に1人が毎年転倒し、転倒した5人に1人が重症を負う(10人に1人は骨折する)という内容です。
同じ記事に、運動介入と転倒予防の統合解析の結果がまとめられています(2022年1月公開・2024年8月更新の内容です)。
| 運動の種類 |
転倒発生率の低下 |
| すべての運動介入 |
23%低下 |
| バランス+機能的運動 |
24%低下 |
| 太極拳 |
19%低下 |
| 多要素運動(歩行+バランス+機能的運動) |
34%低下 |
最も効果が大きかったのは、歩行とバランスと機能的な動作を組み合わせた多要素運動です。卓球のラリーには、台の前後左右への小さな移動、打球のたびの重心移動、腕を伸ばしてかがむ動作が同時に含まれます。要素の構成としては多要素運動に近い形です。
ただし卓球そのものを対象にした統合解析はありません。「卓球で転倒が34%減る」とは言えない点は、はっきりさせておきます。
3. 心肺機能を保つ中強度の有酸素運動
メッツ表は運動強度を4段階に分けています。1.5メッツ以下が座位行動、1.6〜2.9メッツが低強度、3.0〜5.9メッツが中強度、6.0メッツ以上が高強度です。卓球の4.0メッツは中強度の帯のほぼ真ん中にあたります。
この位置が効いてきます。ガイド2023が高齢者に求めているのは「3メッツ以上の身体活動」なので、卓球は打っている時間がそのまま推奨事項の対象時間になります。一方で6.0メッツの高強度には遠く、息が続かなくなるほどの負荷はかかりません。
家事の多くは中強度に届きません。掃除機がけがちょうど3.0メッツ、食料品以外の買い物は2.3メッツです。日常生活だけで中強度の時間を確保するのは難しく、そこを埋める役割を運動が担います。
4. 体重と体型の維持
体重55kgの人が60分打つと約220kcal、90分で約330kcalが目安です(計算式と体重別の表は次の章にまとめました)。
ただし、この数字だけで体重が落ちると考えないでください。週1回の運動で消費できる量は、日々の食事の内容に比べれば小さな数字です。
卓球が効いてくるのは体重計より体型のほうです。1時間立ち続け、膝を曲げ、腕を伸ばし続ける時間が週に1〜2時間確保されます。同じ1時間を座って過ごした場合との差は、消費カロリーよりも「使った筋肉の量」に出ます。
5. 骨に体重をかける時間が増える
長寿科学振興財団が運営する健康長寿ネットは、骨粗鬆症予防には重力のかかる陸上での運動が適しており、物理的な負荷が大きい運動ほど骨密度が増えやすいと説明しています。筋力トレーニングも腱を介して骨に刺激が加わる運動として挙げられています。
卓球は立位で自分の体重を支え続ける運動なので、この「重力のかかる陸上での運動」に該当します。
一方で、ジョギングのような着地衝撃はありません。骨に加わる負荷という点では、ウォーキングと同じ程度に見ておくのが安全な読み方だと考えます(卓球の骨密度への効果を検証したデータは見つかりませんでした)。骨を目的にするなら、運動だけでなくカルシウムの摂取と日光を浴びることを組み合わせる必要があります。
6. 頭と体を同時に使う
国立長寿医療研究センターは、認知課題と運動課題を同時に行う「コグニサイズ」という認知症予防プログラムを開発しています。頭で考える課題と体を動かす課題を同時に行うことで、脳と体の機能を効果的に高める狙いです。
卓球のラリーでは、ボールの回転とコースを読みながら、足を動かし、次に自分がどこへ返すかを決めます。判断と運動が同時に進む点で、二重課題という考え方に構造が近い運動です。
ただし卓球がコグニサイズとして検証されているわけではありません。「卓球をすれば認知症を防げる」という言い方は根拠を超えています。
7. 人と会う予定ができる
千葉大学予防医学センターの近藤克則氏は、日本老年学的評価研究(JAGES)の結果を『Aging&Health』No.86で報告しています。スポーツや趣味の会などへの参加者ほど、要介護リスクや要介護認定、認知症を伴う要介護認定を受ける確率が低いという内容です。スポーツの会の参加者が多いまちでは、参加していない住民も含めてうつが少ないという結果も紹介されています。
卓球のラリーは相手がいなければ1球も成立しません。この構造が効いてきます。詳しくは「続かなかった運動と卓球の違い」で扱います。
卓球1時間の消費カロリーはどのくらいか
厚生労働省のe-ヘルスネットは、エネルギー消費量の計算式を次のように示しています。
エネルギー消費量(kcal)= 1.0 × エクササイズ(メッツ・時)× 体重
卓球は4.0メッツなので、60分続ければ4.0メッツ・時です。体重別に当てはめると次のようになります。
| 体重 |
卓球60分 |
卓球90分 |
散歩60分(3.5メッツ) |
| 45kg |
180kcal |
270kcal |
158kcal |
| 50kg |
200kcal |
300kcal |
175kcal |
| 55kg |
220kcal |
330kcal |
193kcal |
| 60kg |
240kcal |
360kcal |
210kcal |
| 65kg |
260kcal |
390kcal |
228kcal |
この式で出る数値には、じっとしていても使う安静時の消費分(1メッツ相当)が含まれます。運動によって増えた分だけを見たい場合は、卓球の列なら表の数値の4分の3程度、散歩の列なら7割程度と考えてください。
「ウォーキングの倍」という説明は正確ではありません
卓球の消費カロリーを紹介する記事には、ウォーキングの倍という表現がよく出てきます。メッツ表の数値を並べると、その説明は成り立ちません。
| 運動 |
メッツ |
| ヨガ(全般) |
2.3 |
| 散歩 |
3.5 |
| 健康体操(中程度の労力) |
3.8 |
| 歩行(4.5〜5.5km/時・中程度のペース) |
3.8 |
| 卓球 |
4.0 |
| 歩行(自分で選んだペース) |
4.0 |
| 水中運動・アクアビクス |
5.3 |
卓球の4.0は、中程度のペースで歩いたとき(4.5〜5.5km/時、3.8メッツ)をやや上回る程度です。倍にはなりません。数字を盛った記事を信じて始めると、期待とのずれで続かなくなります。
卓球が効いてくるのは「時間」のほうです
同じ4.0メッツなら、差がつくのは続けられる時間です。
30分と決めて歩き始めたウォーキングは、30分で終わります。時計を見ながら歩く時間は長く感じます。一方、ラリーとゲームは1時間半を過ぎても終わりの合図が来ません。夢中になっているうちに時間が経つ運動は、総量で差をつけます。
55kgの人が90分打てば330kcalです。散歩60分の193kcalとは、1.7倍の開きが出ます。強度ではなく時間で稼ぐ運動、というのが卓球の正確な位置づけです。
体重を落とすことが目的の場合
週1回の運動で消費できるカロリーは、食事の内容に比べれば小さな数字です。体重を動かしたい場合は、運動だけで完結させず食事の見直しと並行してください。卓球は体重を落とす手段というより、筋力と体型を保ちながら座っている時間を減らす手段として考えるほうが現実的です。
更年期以降の女性に卓球が向く理由
シニア向けの運動記事は男女の区別なく書かれているものがほとんどです。ただし50代以降の体の変化には、女性に特有の部分があります。

閉経後に骨量が落ちる仕組み
健康長寿ネットは、エストロゲンというホルモンが、骨を形成する骨芽細胞を助け、骨を破壊する破骨細胞を抑える働きをすると説明しています。閉経に伴ってエストロゲンの分泌が低下すると、骨からカルシウムが引き出され、骨がもろくなっていきます。体内のカルシウムのうち99%を骨が貯蔵しているため、この変化は全身に影響します。
前の章で触れたとおり、骨は重力のかかる運動で刺激されます。卓球の1時間は、ほぼ全部が立位です。同じ1時間でも、座ってできる趣味とはこの点が決定的に違います。
立って動く時間が姿勢に効く
打球のたびに膝を曲げ、体をひねり、腕を伸ばします。背中を丸めたまま卓球を続けることはできません。
背中と体幹を使う時間が週に1〜2時間増えることは、日常生活では起こりにくい変化です。炊事や洗濯、読書や縫い物といった手元の作業は前かがみの姿勢が多く、背中側を使う機会が少ないためです。
続けやすさが女性の運動習慣を左右する
50代以降に運動を始めた人が最初にぶつかるのは、効果が出る前に飽きるという壁です。
前述のJAGESの結果では、会に参加する形の運動が要介護リスクの低さと結びついていました。運動を選ぶときは、種目の効果だけでなく「自分が半年後も行っているか」を基準に入れてください。続かなかった原因は、意志の弱さではなく一人で完結する形を選んだことにあります。
「週1回」で足りるのか——国の基準から逆算する
多くの記事が「週1回でも十分」と書いています。国の推奨事項に照らすと、その表現は正確ではありません。
厚生労働省が令和6年1月に策定した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の推奨事項は次のとおりです。
| 対象 |
身体活動 |
運動 |
座位行動 |
| 高齢者 |
3メッツ以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上、週15メッツ・時以上) |
有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上/筋力トレーニングを週2〜3日 |
長くなりすぎないように注意する |
| 成人 |
3メッツ以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上、週23メッツ・時以上) |
息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上(週4メッツ・時以上)/筋力トレーニングを週2〜3日 |
長くなりすぎないように注意する |
高齢者の目標は週15メッツ・時です。ちなみに旧基準である身体活動基準2013では、高齢者は強度を問わず週10メッツ・時でした。ガイド2023はこれを引き上げています。古い数字を載せた記事がまだ残っているので注意してください。
週1回90分の卓球は、目標の4割です
卓球4.0メッツで計算します。
- 週1回60分 = 4.0メッツ・時(目標の約27%)
- 週1回90分 = 6.0メッツ・時(目標の約40%)
- 週2回90分 = 12.0メッツ・時(目標の80%)
週1回の卓球だけでは週15メッツ・時に届きません。ここは正直に書きます。
とはいえ「だから週1回は無意味」ではありません。週15メッツ・時は、卓球という1つの種目で埋めるものではなく、生活全体の身体活動で埋めるものです。ガイドは「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)」と併記しています。掃除機がけ(3.0メッツ)、食料品の買い物(3.3メッツ)、ゆっくり階段を上る動作(4.5メッツ)も、この40分に入ります。ただし食料品以外の買い物は2.3メッツで、基準を満たしません。
卓球のない日に3メッツ以上の歩行を30分足すと、1日1.5メッツ・時です。週4日で6.0メッツ・時になります。週1回90分の卓球6.0と合わせれば12.0メッツ・時で、目標の8割に届きます。
週1回の卓球は、生活全体の運動量を引き上げる「核」として置くのが正しい使い方です。 週1回で全部が完結するわけではありません。
多要素な運動は週3日以上が推奨されています
ガイド2023は高齢者に対して、有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動といった多要素な運動を週3日以上行うことも推奨しています。
卓球には有酸素の要素とバランスの要素が入りますが、筋力トレーニングと柔軟運動は別に必要です。卓球の日以外に、自宅でのスクワットやストレッチを短時間でも入れておくと、推奨事項の形に近づきます。
慣れてきたら週2回へ
体力がついてきたら回数を増やします。週2回90分で12.0メッツ・時になり、日常の歩行を足せば目標を超えます。
無理をしないための線引き
- 胸の痛み、動悸、めまい、強い息切れが出たら、その場で中止して座る
- 膝や腰に痛みが出た日は、その日のうちに切り上げる。翌週まで残る痛みは休む合図
- 高血圧・心疾患・整形外科の治療を受けている場合は、始める前に主治医へ相談する
- 夏場の体育館は室温が上がる。開始前と30分ごとに水分を取る
続かなかった運動と卓球の違い
ここまで数字で見てきたとおり、卓球の運動強度は突出したものではありません。それでも卓球をすすめる理由は、続く仕組みが競技のルールに組み込まれている点にあります。

ラリーは一人では成立しません
ウォーキング、ジム、体操は、いずれも一人でできます。一人でできるということは、一人でやめられるということでもあります。
卓球のラリーは相手がいなければ1球も打てません。誰かと時間を合わせることが競技の前提に組み込まれている点が、一人で完結する運動との違いです。
雨だから今日はやめる、という判断も卓球では起きにくくなります。屋内競技なので天候の影響を受けず、約束した曜日がそのまま運動日になります。
会に参加している人ほど要介護リスクが低い
前述のJAGESの結果は、この構造を裏づけています。スポーツや趣味の会などへの参加者ほど、要介護認定や認知症を伴う要介護認定を受ける確率が低いという結果でした。
さらに、スポーツの会の参加者が多いまちでは、参加していない住民も含めてうつが少ないという結果も出ています。運動そのものだけでなく、人が集まる場があること自体が効いている可能性を示すデータです。
この「一人にしない」という設計は、シニア期に限った話ではありません。仕事終わりの時間をどう運動に振り向けるかという同じ課題については、働く世代が仕事帰りに運動を続ける方法を見ることで、別の角度から整理しています。
勝ち負けより「先週より続いた」が効きます
卓球のラリーには、はっきりした上達の実感があります。先週は3往復で切れていたラリーが、今週は10往復続く。この変化は数えれば分かります。
体重計の数字は1か月では動きません。血圧も1回では変わりません。上達が可視化される運動は、効果が出るまでの空白期間を埋めてくれます。
シニア・初心者の卓球の始め方
どこで始めるか
選択肢は3つあります。
- 公共施設の個人開放 — 市区町村の体育館で、卓球台を開放している時間帯があります。料金は自治体ごとに定められており、市外在住者は割増になる例もあります。実施曜日を公開していない自治体もあるため、電話確認が必要になる場合があります。
- 卓球教室・スクール — コーチが基本動作から教えます。相手を探す手間がなく、初回から打てます。シニア向けや初心者向けのクラスを設けているところを選びます。
- 民間の卓球場 — 時間貸しで台を借ります。打つ相手を自分で連れて行く前提の施設が多いため、経験者の知人がいる場合に向きます。
運動経験がなく、相手のあてもない状態から始めるなら、2番の教室が最短です。施設タイプごとの料金や予約の違いは卓球ができる場所はどこかに整理しています。
最初に用意するもの
初回に必要なものは多くありません。
- 室内用のシューズ — 体育館の床で滑らない靴。専用のシューズでなくても、底が平らな室内履きがあれば始められます
- 動きやすい服 — 腕が上がる服なら手持ちで足ります。汗をかくので着替えを1枚
- タオルと飲み物
ラケットは、教室や体験レッスンなら貸し出しがあることがほとんどです。続けると決めてから買えば十分間に合います。
自分のラケットを持ちたくなった段階では、初心者向けのセット品か、貼り上がりのモデルから選びます。選び方の詳細は卓球ラケットのおすすめと選び方にまとめています。道具・場所・費用をまとめて確認したい場合は卓球の始め方に7つの手順として整理しています。
一人で行っても大丈夫か
一人で申し込む人は珍しくありません。卓球は相手と交互に打つ競技なので、黙ったまま1時間過ごすことがそもそも起きません。
同じ曜日に通っていれば、顔ぶれは自然に固定されます。誘い合う関係は、通っているうちにできあがります。
打ち方が身についてくると、ラリーの内容も変わってきます。最初の壁を越えた先の練習の進め方は卓球練習で上手くなる方法を参考にしてください。
よくある質問
卓球はシニア・高齢者の健康に本当に効果がありますか?
卓球は4.0メッツの中強度の身体活動で、厚生労働省が推奨する「3メッツ以上の身体活動」に該当します。立位での重心移動と全身の動きが含まれ、身体接触がないため転倒や衝突のリスクも低い運動です。医療機関や福祉施設では卓球療法として機能訓練にも使われています。ただし卓球単独で転倒や認知症を予防できると示した研究はないため、効果を過大に見積もらないでください。
週1回の卓球でも健康効果はありますか?
週1回90分の卓球は6.0メッツ・時で、高齢者の目標である週15メッツ・時の約4割にあたります。週1回だけで基準を満たすことはできません。卓球のない日に30分程度の歩行を週4日足すと、合計12メッツ・時前後になり、目標の8割に届きます。週1回の卓球は、生活全体の運動量を引き上げる核として位置づけるのが現実的です。
50代・60代から卓球を始めるのは遅いですか?
遅くありません。卓球はラリーの速さを打ち合う二人で決められるため、体力に合わせて強度を下げたまま成立します。走る場面がなく、動く範囲も台の周りの数歩に収まります。基本動作を教える教室や体験レッスンから入れば、運動経験がなくても無理なく始められます。
卓球は膝や腰が悪くても大丈夫ですか?
多くの場合、負担を調整しながら楽しめます。卓球は走る動作と急停止を含まず、動く範囲も自分で決められるためです。座ったままのラリーや球出し、的当てといった形で行う卓球療法も、医療・福祉の現場で実施されています。ただし痛みがある場合は自己判断で始めず、主治医に相談してください。
卓球はダイエットや体型維持にも役立ちますか?
体重55kgの人が60分打つと約220kcal、90分なら約330kcalが目安です(e-ヘルスネットの計算式による)。散歩60分の約193kcalと比べると、1時間あたりの差は大きくありません。卓球の4.0メッツは、中程度のペースの歩行(3.8メッツ)をやや上回る程度で、「ウォーキングの倍」という説明は不正確です。卓球の強みは強度ではなく、飽きずに長く続けられることにあります。体重を落とすことが目的なら、食事の見直しと組み合わせてください。
卓球を始めるには何を用意すればいいですか?一人で参加しても大丈夫ですか?
最初は室内用のシューズと動きやすい服、タオルと飲み物があれば足ります。ラケットは教室や体験レッスンで借りられることがほとんどです。一人での参加も問題ありません。卓球は相手と交互に打つ運動なので、通っているうちに顔ぶれが固定され、誘い合う関係が自然にできます。
まとめ
数字で確認した内容を並べます。
- 卓球は4.0メッツの中強度運動。中程度のペースの歩行(4.5〜5.5km/時、3.8)をやや上回る程度
- 60分の消費カロリーは体重55kgで約220kcal。「ウォーキングの倍」は誤り
- 高齢者の目標は週15メッツ・時(1日40分・約6,000歩以上)。週1回90分の卓球だけでは4割にとどまるため、日常の歩行と組み合わせる
- 転倒予防で効果が大きいのは多要素運動(34%低下)。卓球は要素の構成として近いが、卓球単独の検証データはない
- 骨には重力のかかる運動が有効。立位で1時間を過ごす卓球は該当するが、着地衝撃はウォーキング並み
- スポーツや趣味の会への参加者ほど、要介護認定を受ける確率が低い
卓球が優れているのは、強度ではなく続く構造です。相手がいなければ1球も打てないというルールが、行く理由を毎週つくります。屋内競技なので天候にも左右されません。
週1回で全部が解決するわけではありません。それでも、座っている時間を1時間減らし、人と会う予定を1つ増やし、翌週も同じ場所へ行く理由が残る。そこから始めるのが、続かなかった経験を持つ人にとって現実的な入口です。
まずは体験レッスンで1時間打ってみてください。実際の様子は津田沼で卓球を体験できる無料レッスンの流れにまとめています。