SANWEI(三維)は粘着だけではない|選手の構成とTargetの違いを読む

海外メーカー図鑑 08 SANWEI
目次

この記事の要約

中国メーカーのラバーと聞いて、べたっとした粘着面を思い浮かべる人もいるはずです。SANWEI(三維)のTargetには、その印象に合う製品もあれば、非粘着の製品もあります。さらにメーカーの歩みをたどると、最初に気になってくるのはラバーよりも、ラケットの握り方です。全9回の「知られざる海外卓球メーカー図鑑」、第8回は、創業者の発想と選手の掲載用具からSANWEIの設計の幅に触れます。

この記事でわかること

木のラケットを持ちグリップを観察する男性
重さだけでなく、握ったときの指の収まりも確かめてみましょう。

SANWEIの出発点は、ラケットの握り方への疑問

技術者であり、卓球愛好家でもあった創業者

SANWEIの会社紹介には、1993年からの歩みと、創業者Su Zhimin氏の用具づくりが記されています。技術者で卓球愛好家でもあった創業者が取り組んだのは、独自のグリップを持つPistol Racketでした。

ラバーの回転量やスピードより前に、手とラケットの関係を考えた出発点です。 卓球を始めると、打ち方を覚えることに夢中になり、握る部分の形は与えられたものとして受け止めがちです。そこを設計の対象として扱った点に、このメーカーを知る面白さがあります。

もちろん、独特の形なら誰にでも握りやすい、体への負担が減る、とまでは読み取れません。会社が自分たちの始まりをどのように説明しているかを知る話として読むと、現在の幅広い用具にも興味が湧いてきます。

中国のメーカーから、広い用具づくりへ

公式紹介は、北京の本部、天津の国際部門、河北の工場について説明しています。中国の卓球用具メーカーで、現在の製品群はラバーだけに収まりません。

  • TargetやGearなどの裏ソフトラバー。
  • 粒を外向きにしたラバー。
  • 純木材や特殊素材を使うラケット。
  • ボール、完成品ラケット、シューズなどの用具。

同じ中国メーカーでも、紅双喜のキョウヒョウを中心とした用具づくりとは、注目する入口が変わります。SANWEIでは、粘着ラバーに興味を持って調べ始めた人が、握り方や木材の構成まで気になってくる。その広がりを楽しめます。

拠点の説明から分かる範囲

公式の工場紹介は、全製品を同じ工場で作っているという証明ではありません。製造国や素材を知りたい製品は、その製品の説明を読みましょう。

エイブラハムズ選手の用具から見える組み合わせの幅

ラケットと、異なる名前のラバーが並ぶ

SANWEIによるルーク・エイブラハムズ選手の紹介には、南アフリカ代表というプロフィールとともに、用具の構成が掲載されています。並ぶ名前は、ラケットのVerdi、ラバーのNew Target NationalとGear Hyperです。

一人の選手の紹介に、異なるシリーズのラバーが載っていることに注目です。 メーカーを1つの看板商品で覚えるよりも、役割の違う用具を組み合わせる姿が見えてきます。

一方、この紹介だけでは、どちらのラバーをフォアとバックに貼っているか、厚さや硬さをどう選んだかは分かりません。本人の左右を推測して同じ組み合わせを薦めるより、「自分の両面には同じ役割を求めているだろうか」と考えるきっかけにできます。

フォアとバックで、残したいプレーは違ってもよい

フォアでは思い切り振れるのに、バックでは相手の速い球を返すだけで精いっぱい。そんな違いを感じているなら、両面の希望を別々に書くと用具の説明を読みやすくなります。

場面 まず言葉にしたいこと
フォアで先に攻める 下回転の球を持ち上げたいか、速い球で押したいか
バックで相手の球を受ける 台に収めたいか、コースを変えて返したいか
短いレシーブをする 球が長くなりすぎるのか、ネットにかかるのか
ラリーを続ける 振る時間が足りないのか、強く打つとミスが増えるのか

これはエイブラハムズ選手の戦い方を推定した表ではありません。公開されている構成から、一人ひとりの用具選びへ考えを進めるための整理です。

GEWOとアルナ選手の共同開発では、選手が求めた感触に関する説明を読めます。SANWEIの掲載構成では、異なるラバーを含む選択肢の広さに目を向けられます。選手の用具を知る楽しさは、そのまま一式をまねることだけではありません。

選手と同じ名前の用具をそろえたいのか、自分のプレーに合う選択肢を増やしたいのかを考えてみましょう。目的が見えると、製品の見方も変わります。

ラケットを見ながら反対面のラバーを考える男性
フォアとバックで増やしたいプレーを書き出すと、両面の組み合わせを考えやすくなります。

同じTargetでも、CP-TunedとEurope Softは別の設計

粘着か非粘着かは、シリーズ名では決まらない

Targetという名前だけを頼りにすると、製品の違いを見落とします。2026年10月に確認した公式説明では、Target National CP-Tunedは粘着、Target Europe Softは非粘着です。

公式掲載製品 表面の表記 スポンジの表記 硬度・厚さの表記
Target National CP-Tuned Sticky(粘着) Compact Sponge 38・39・40・41度、2.15mm
Target Europe Soft Untacky(非粘着) Cake Sponge 37度、2.1mm

出典:CP-Tuned公式説明、Europe Soft公式説明。

同じTargetでも、表面とスポンジの説明が違います。 中国メーカーだから全部粘着、Nationalという名前だから誰にとっても上位、と考えると、この違いを十分に楽しめません。

粘着は、ラバー表面の粘りを指す言葉です。非粘着はその性質を持たないという分類で、回転をかけられないという意味ではありません。回転や飛び方には、表面だけでなくスポンジ、ラケット、打球の仕方も関わります。

CP-Tunedの工場前処理は、製品を識別する情報

CP-Tunedの公式説明には、工場での前処理についても記載があります。製品名の後半が違うのは単なる飾りではなく、仕様を読み分ける手がかりになります。

ただし、その説明を読んだだけで、無印や別の版より何割速い、といった比較はできません。工場側が説明する処理と、打ったときの感触を測った結果は別です。製品名を最後まで読んで、同じ条件の話かどうかを確かめることが先になります。

感想を読む前に、製品名をそろえる

Targetの感想を見つけたら、National、Europe Soft、CP-Tunedなど末尾の表記まで確認しましょう。違う版の感想を、気になっている製品の評価として受け取らずに済みます。

柔らかいという名前を、使いやすさの保証にしない

Europe Softには37度という表記がありますが、他社の37度と同じ硬さだとは判断できません。硬度の数字は、測り方の異なる製品を横断して順位を付けるための共通点数ではないからです。

柔らかいという言葉に惹かれたら、何を楽にしたいのかも考えてみましょう。小さく振って返したいのか、強く打ったときの感触を変えたいのかでは、確かめたい場面も変わります。

表面、スポンジ、硬度、厚さを別々に読むことが、同じシリーズの違いを理解する近道です。 公式の独自評価点だけで回転やスピードの順位を決めず、まずは何が違う製品なのかをつかみましょう。

二枚のラバーを並べてスポンジの端を比べる男性
同じシリーズでも表面や厚さは異なります。製品ごとの仕様を比べてみましょう。

Gear HyperとFextra Oneから、ラバー以外にも目を向ける

Gear Hyperは、Targetとは別のシリーズ

公式のGearカテゴリには、Gear Hyperの37・38・39度という硬度の選択肢が掲載されています。エイブラハムズ選手の紹介にも登場した名前です。

Targetとの優劣を一列に並べるより、別シリーズにも選べる仕様があることに意味があります。選手のページから知った名前を製品説明で読み直すと、単なる一覧より関心を持って違いを追えます。

硬度を変えられるからといって、現在の用具で生じるミスが必ず解決するわけではありません。たとえばブロックが長くなるなら、まず相手の回転、ラケットの角度、当てる強さを確かめ、そのうえで用具の変更を考える順序が自然です。

Fextra Oneは、7枚の純木材で作るラケット

Fextra Oneの公式説明では、7枚の純木材と、日本で設計したという背景が記されています。特殊素材入りの製品だけが、メーカーの技術を伝えるものではありません。

外側から何枚もの木材を重ねるラケットは、その構成自体が設計です。「カーボンが入っていないから入門用」と決めず、どの素材をどう組み合わせたかを読むと、純木材を選ぶ意味にも目を向けられます。

日本で設計したという説明は、日本製という意味ではありません。また、公式Fextraカテゴリは、旧FEXTRAの生産終了とFextra Oneへの更新を説明しています。古いレビューが豊富でも、今読んでいる製品がOneかどうかは確認したいところです。

新旧の名前を一行で記録する

ラケットはFextra One、ラバーはシリーズ名と版名まで書き残しましょう。あとで説明を読み直すとき、旧製品との取り違えを減らせます。

独自グリップと純木材が、同じメーカーに並ぶ面白さ

創業時のPistol Racketと、現在掲載されるFextra One。形への工夫と木材の構成という違う問いが、同じメーカーの中にあります。

銀河の太陽や陳Proの開発背景を読むなら、粘着ラバーという共通点だけでなく、どのように製品の違いを説明しているかにも注目できます。メーカーを知るほど、用具を国や価格だけでひとまとめにしにくくなるはずです。

木のブレードの端を両手で持って観察する男性
ラバーを替える前に、今のラケットの素材や構成にも目を向けてみましょう。

SANWEIの説明を、次の練習で確かめたいことにつなげる

ラバーの種類が分かっても、すぐに全部を試す必要はありません。今の用具で残したいプレーを一つ、変えたいプレーを一つ書くことから始められます。

  1. 今のラケットと両面のラバー名を書きます。
  2. ドライブやブロックなど、うまくいっているプレーを残します。
  3. レシーブが長くなるなど、変えたい状況を具体的に記します。
  4. 気になる製品の表面、硬度、厚さ、版名を照合します。

CP-TunedとEurope Softなら、最初に見比べるのは粘着と非粘着という表面の違いです。Gear Hyperへ関心が移ったら、37・38・39度という掲載仕様を読むところから始められます。Fextra Oneでは7枚純木材という構成へ目を向けるなど、SANWEIの中でも製品ごとに知りたいことを分けると、説明を楽しく追えます。

SANWEIの魅力は、粘着の一枚に限らず、表面、スポンジ、木材、握り方まで選ぶ視点を増やしてくれるところです。 公式の説明に興味を持ち、自分が打ちたい球と照らして読む。その段階でも、次の練習で確かめたいことは見つけられます。

よくある質問

SANWEIと三維は同じメーカーですか?

はい。本稿では、中国の卓球用具メーカーSANWEI(三維)を扱っています。ラバーだけでなく、ラケットやボールなども扱うメーカーです。

SANWEIのラバーは全部粘着ですか?

いいえ。公式説明でTarget National CP-Tunedは粘着、Target Europe Softは非粘着とされています。同じTargetでも表面の性質が違うため、シリーズ名だけで判断しないでください。

Target NationalとCP-Tunedは同じ製品ですか?

同じ名前の一部を持つだけで、同一仕様とは判断できません。CP-Tunedには工場前処理の説明があり、版名を含めた製品単位で確認する必要があります。

FEXTRAとFextra Oneはどちらが現行ですか?

公式カテゴリは、旧FEXTRAの生産終了とFextra Oneへの更新を説明しています。Fextra Oneは7枚純木材の製品です。旧版の感想を読む際は、製品名を区別しましょう。

エイブラハムズ選手はGear Hyperをバックに使っていますか?

確認した公式紹介はVerdi、New Target National、Gear Hyperを掲載していますが、左右の割り当てまでは記していません。本文では使用面を推測せず、公開された構成として紹介しています。

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シリーズ:知られざる海外卓球メーカー図鑑(全9回)
  1. 第1回 銀河(YINHE)のラバーを知る|太陽の通常版・特注版と陳Proの開発背景
  2. 第2回 紅双喜(DHS)はどんな卓球メーカー?キョウヒョウの歴史と選手が選ぶ理由
  3. 第3回 GEWOのラバーとラケット|アルナ選手との共同開発とドイツの用具づくり
  4. 第4回 LOKI(ロキ)の卓球用具|王皓選手の開発協力とRXTONだけではない魅力
  5. 第5回 マテリアルスペシャリストのラバー|規則変更から生まれた異質系の発想
  6. 第6回 ザウアー&トレーガー(Sauer & Tröger)のラバー|粒高選手が用具と講習を作った理由
  7. 第7回 スピンロード(SpinLord)のラバー|ドーネングランツの番号と、遅すぎたアンチの開発秘話
  8. 第8回 SANWEI(三維)は粘着だけではない|選手の構成とTargetの違いを読む(このページ)
y0n0zawa

ライター

y0n0zawa

気づけばデスクワーク歴20年。パソコンの前に座りすぎて、腰は悲鳴をあげ、ついにはヘルニア持ちに。そんなある日、鏡に映った自分の体型に衝撃を受け、「これはまずい」と一念発起。ダイエットと運動不足解消のために20年ぶりに卓球ラケットを握ったら、昔の血が騒ぎ出した。 最初はフォアすら入らず途方に暮れたが、徐々に感覚を取り戻し、今では“ヘルニア持ち卓球戦士”として奮闘中。腰をかばいつつもスマッシュは全力、練習後は湿布と仲良し。学生時代とは違う、大人ならではの視点で卓球を楽しみ直しながら、同じように再チャレンジする人に役立つ情報を発信している。