SUMMARY
この記事の要約
粒高を使う楽しさは、相手が返しにくい球を出すことだけではありません。強いドライブを受け止めたり、自分から押して攻めたり、違う方法でラリーを組み立てられることにもあります。ドイツのSauer & Tröger(ザウアー&トレーガー)は、そうした粒高プレーヤーの経験を背景に生まれ、用具と講習を展開しているブランドです。全9回の「知られざる海外卓球メーカー図鑑」、第6回は、創業の物語から粒の構造、反対面のラバーまでたどります。
この記事でわかること
練習で増やしたいプレーを思い浮かべながら、ラバーの特徴を読んでみましょう。粒高選手が、ラバーだけでなく講習まで作った
自分たちのプレーを続けるための開発
公式のブランドストーリーには、セバスチャン・ザウアー氏とパスカル・トレーガー氏が、粒高を使って台の近くでプレーしていた背景が記されています。遠くへ下がってカットするだけでなく、前陣で相手の球を受ける戦い方です。
公式沿革は、2008年に滑る粒高が禁止されたことを、開発へ向かう動機として挙げています。自分たちに合う代わりの用具を探し、外部のゴム・プラスチックの製造業者と開発を進めた経緯です。
速い球をさらに速く打つためではなく、台の近くで続けたいプレーがあったことが、このブランドの原点です。 製品名だけを眺めていたときとは、ラバーの説明の読み方が変わってきます。
講習の経験はブランド設立より早い
ザウアー氏が講習を始めたのは2007年です。公式は2010年に独自開発の構想を進め、2013年にブランドを設立したと説明しています。用具を作る前から、粒高をどう使うかという活動がありました。
ラバーを替えたのに、試合ではうまく返せない。そんなときは、製品の性能と使う技術を別々に考える必要があります。このブランドが用具と講習を扱う背景は、その関係を考える手掛かりになります。
| 年 |
公式資料にある動き |
| 2007年 |
ザウアー氏が講習を開始 |
| 2008年 |
滑る粒高の禁止が用具探しの動機に |
| 2010年 |
独自開発の構想を具体化 |
| 2013年 |
ブランドを設立 |
| 2015年 |
ザウアー氏の単独経営へ |
| 2020年10月 |
ニクラス・オット氏が新たな株主に |
創業時の2人の名前がブランドに残っていても、経営体制は変わっています。昔の紹介文を、そのまま現在の役職として読むと取り違えます。
用具を替えたあとの練習も考える
ラバーの説明を読むときは、その製品でどんな打球を覚えたいかも考えてみましょう。講習を展開していること自体は、用具だけで技術が身に付くという意味ではありません。
Hellfire XとMonkeyは、粒の形と曲がり方から読む
Hellfire Xの粒は、どこが違う?
Hellfire Xの公式説明は、ザウアー氏の指揮のもと、粒高プレーヤーとともに3年間の試験を経て開発したとしています。粒の間隔が広く、粒の首は滑らかで、頭には少しざらつきを持たせた設計です。
同じ粒でも、球が触れる頭と、その下で曲がる部分を分けて説明しています。さらに、小さい圧力なら硬く、大きい圧力では曲がるという性質を挙げています。
粒高は、粒の長さだけでなく、どの部分が球に触れ、力を受けるとどう曲がるかまで読むと面白くなります。 軽く当てる球と、強いドライブを受ける球で、求める動きが同じとは限らないからです。
OXとスポンジ入りを同じ感触と考えない
Hellfire Xには、スポンジを付けないOXと、スポンジ入りがあります。メーカーは両者の性質が大きく違うと明記しています。製品名が同じでも、OXの印象をそのままスポンジ入りへ当てはめられません。
たとえば、「相手のドライブを台の近くで短く返したい」と「下がったときにも返球を続けたい」では、練習で確かめる場面が変わります。どちらに合うと断定する前に、普段どこで球を打っているかを思い浮かべてみてください。
OXかスポンジ入りかは、厚さの好みだけでなく、使いたい打球と一緒に考える条件です。 確かめるときは、同じラケットに貼っているかも含めて、比較の条件をそろえると違いを追いやすくなります。
Monkeyも、圧力による変化に着目
Monkeyの公式説明では、細長い形状の粒、広い粒間隔、粗い粒頭を挙げています。軽い圧力では中程度の硬さがあり、強い圧力では柔らかくなるという説明です。
スポンジは減衰を狙った設計で、OXを使ってきた人にも検討を促しています。スポンジが付くから必ず弾みが強くなる、という単純な整理では収まりません。
Hellfire XとMonkeyを読むと、メーカーが粒の構造とスポンジを組み合わせて、返球の性質を調整していることが分かります。これは公式が示す設計意図であり、独自に打球速度や変化量を測った結果ではありません。
粒の形だけでなく、スポンジの有無にも注目して違いを比べましょう。返すだけで終わらない、前陣粒高の考え方
次に打つ球まで想像する
相手のドライブを返せるようになると、ラリーが続くこと自体がうれしくなります。次に気になるのは、返したあとにどんな球が来るかです。もう一度バックで受けるのか、浮いたらフォアで攻めるのかで、欲しい返球も変わります。
粒高の変化は、次の打球を作るためにも使えます。 変化量だけを増やそうとするより、自分が続けやすいラリーを考える方が、用具の比較も具体的になります。
- 速いドライブは、まず長さを抑えて返したい。
- ゆっくり来る球は、自分から押して深く送りたい。
- 球が浮いたら、反対面で攻撃したい。
この3つは別の課題です。全部を一度に変えると、ミスが用具のせいか、打ち方のせいか分かりにくくなります。次の練習で確かめることを絞れば、製品説明のどこを読むかも決まります。
同じ球を返して比べてみる
練習では、最初から試合をするより、相手に同じような球を送ってもらうと返球を観察しやすくなります。軽く当てた球が長くなるのか、自分から押すとネットを越えやすいのか、といった具体的な点を見ます。
打球と結果を短くメモする
「ドライブを軽く受けると長くなる」「ゆっくり来る球を押すと収まる」など、試した打球と返球を組にして残しましょう。「よく変化する」だけより、次の練習で確かめやすくなります。
講習を選ぶときは、自分が習いたい場面と、案内されている対象や練習内容を見比べましょう。粒高で短く返したいのか、自分から攻める打球を覚えたいのかを言葉にすると、受講の目的も伝えやすくなります。
ブロックしたあとに自分から打つ一球も、練習相手と確かめてみましょう。粒高の反対面まで見ると、メーカーの全体像が見えてくる
表ソフトHassと、アンチBlackout
ザウアー&トレーガーは粒高だけのメーカーではありません。Hassの公式説明は、表ソフトとして、Zargusより粒がやや長く細く、配列間隔も広いとしています。短い動作から自分で攻める設計として読めます。
一方、Blackoutの公式説明はアンチです。表面が平らなラバーで、柔らかい減衰スポンジと、短い返球を狙う構成を説明しています。
粒が外に出ているかどうかに加え、自分から攻めるためか、相手の速さを抑えるためかで整理すると、分類を覚えやすくなります。 商品名の強そうな響きより、実際の構造を先に読む方が理解につながります。
裏ソフトICONは、ドイツ設計・日本製
ICONの公式説明は、50度と表記するスポンジに、柔らかいトップシートを組み合わせた攻撃用の裏ソフトです。設計はドイツ、製造は日本と明記しています。
粒高で相手の球を返したあと、反対面でドライブを打ちたい人には、こうした製品まで展開している点が興味深いところです。ブランドの特徴を、守るラバーだけに限定できません。
ドイツのブランドであることと、個々の製品をどこで作るかは別の情報です。 ICONの日本製表記を見ても、同社のすべてのラバーの製造国まで決めつけることはできません。
スポンジの50度はメーカーの表記です。他社の数字とそのまま同じ感触になるとは限りません。数字に加え、トップシートとの組み合わせがどう説明されているかに注目しましょう。
| 製品 |
分類 |
公式説明で着目したい部分 |
| Hellfire X |
粒高 |
粒の首と粒頭、圧力による曲がり方 |
| Monkey |
粒高 |
細長い粒と減衰を狙ったスポンジ |
| Blackout |
アンチ |
柔らかいスポンジで短い返球を狙う |
| Hass |
表ソフト |
粒形状と、自分から攻める方向 |
| ICON |
裏ソフト |
50度表記のスポンジと柔らかいトップシート |
この表は順位ではありません。どの製品も同じ目的で競っているわけではないため、分類と役割から読み始めてください。GEWOのシリーズ別の設計と合わせると、メーカーごとに製品群を作る考え方も比べられます。
粒高の反対面で何をしたいか決めると、ラバーとラケットを選びやすくなります。ラケットも、台からの距離や攻撃の比重で読む
反対面のラバーも含めて考える
公式のラケット一覧には、守備型のFirestarter、オールラウンドのUnicorn、攻撃型のBananaなどがあります。ラケットまで扱っていることからも、ラバー単体にとどまらない製品展開が分かります。
LOKIのラバーとラケットも、メーカー全体を知ると、単品の名前だけでは見えなかった製品の広がりがあります。
粒高の返球だけを考えてラケットを選ぶと、反対面で打つドライブのことを忘れがちです。逆に、フォアの速さだけを基準にすると、バックで止めたい球との折り合いが課題になります。
両面で何をしたいかを書き出すと、ラケットの説明も自分のプレーと結び付きます。 「バックは短く返す、フォアは回転をかけて先に攻める」のように、役割を分けてみましょう。
同じメーカーでそろえることを目標にしない
ラバーとラケットを同じブランドにすると、製品の関係を調べる楽しさがあります。ただし、同じ名前でそろえること自体が、プレーの相性を保証するわけではありません。
選手と用具の関係を読むときも同じです。紅双喜の選手モデルと開発背景が面白いのは、名前の一致だけではなく、何を目指した設計なのかが分かるからです。自分の道具を選ぶときには、そこから一歩戻って、今できる打球と覚えたい打球を考えます。
変える条件を増やしすぎない
ラバーを比べたいときに、ラケットまで同時に替えると違いの理由を追いにくくなります。何を変えて確かめるのかを決めると、練習の感触を次の判断に使いやすくなります。
製品名の先にある仕様まで確かめる
Hellfire XやMonkeyの名前を覚えたら、次はOXかスポンジ入りかを見ます。 色と厚さの選択肢も含め、比較しているものが同じ仕様かを確認してください。
ICONには1.5、1.7、1.9、2.1mmの掲載があり、Blackoutは1.5、2.0mmです。同じ厚さの数字でも、攻撃用の裏ソフトと減衰を狙うアンチでは、設計の役割が違います。
比較するときは、次の順に読むと整理できます。
- 粒高、表ソフト、アンチ、裏ソフトのどれか。
- 製品名と版が同じか。
- スポンジの有無と厚さが同じか。
- 自分が試したい打球を、公式はどう説明しているか。
用具の名前に詳しくなることより、選んだ理由を自分のプレーで説明できることが大切です。 粒高を作り、使い方を伝える活動もしてきたブランドだからこそ、製品を調べたあとには「次に何を練習しようか」という楽しみが残ります。
講習から用具へ続く、ザウアー氏の歩み
ザウアー氏の講習開始は2007年で、ブランド設立より前です。教える活動と用具づくりを一緒に始めたのではなく、粒高のプレーを伝える経験が先にありました。そこへ規則変更後の用具探しが重なり、独自開発へ進んだ順序が、このブランドらしさを伝えます。
Hellfire Xでは、ザウアー氏の指揮で粒高プレーヤーと開発し、3年の試験期間を経たという公式説明があります。粒の首と頭を分けて説明する細かさも、ラバー全体の柔らかさだけでは見えない設計への入口です。表面の部位ごとに役割を考えると、技術用語も具体的な形へ結び付きます。
ICONの厚さから見える、粒高の反対面への関心
ICONの公式掲載は1.5mm、1.7mm、1.9mm、2.1mmです。裏ソフトにも複数の厚さを用意し、攻撃面の選択肢を広げています。粒高の使い手が作ったブランドでも、返球を変える面だけに開発が閉じていません。
Hassの表ソフト、Blackoutのアンチ、ICONの裏ソフトへと説明を読むと、分類の違う製品を同じメーカーが扱う理由を考えられます。短い動作で打つのか、速い球を抑えるのか、回転をかけて攻めるのか。作りたいプレーが増えるほど、製品ごとの構造にも興味が向きます。
Blackoutの厚さは1.5mmと2.0mmで、ICONとは異なる選択肢です。アンチの減衰を狙ったスポンジと、裏ソフトの攻撃用スポンジを読むときでは、同じ厚さの数字でも知りたい性質が変わります。厚さの一覧が、製品の目的を思い出す手がかりになるのです。
メーカーが粒高の講習と異なる分類の用具を並べていることは、プレーを1つの返球に閉じ込めないきっかけにもなります。
用具の説明を読んだあと、講習の案内へ関心が戻るのも自然です。材料を選ぶことと、その材料でどの動作を身に付けるかを、行き来しながら考えられるブランドです。
よくある質問
Q. Blackoutもザウアー&トレーガーのラバーですか?
A. 同ブランドが扱うアンチラバーです。粒高のHellfire XやMonkeyとは構造が異なり、公式は柔らかい減衰スポンジで短い返球を狙う設計を説明しています。
Q. ドイツのブランドなのに、ICONは日本製ですか?
A. 公式はICONをドイツ設計・日本製と明記しています。ブランドの拠点と製造国は別の情報なので、この表記に矛盾はありません。
Q. Hellfire XはOXでもスポンジ入りでも同じ感触ですか?
A. 公式は両者の性質が大きく違うと説明しています。製品名だけでまとめず、スポンジの有無まで確認し、普段よく使う打球で感触を確かめることが大切です。