SUMMARY
この記事の要約
製品名にIIやIIIが付くと、前のモデルより全部よくなったと考えたくなります。ドイツのSpinLord(スピンロード)の公式説明を読むと、その思い込みが少し変わります。粒高の変化を控えて自分から攻めやすくしたり、アンチをあえて速くしたりと、目指すプレーに合わせた選択があるからです。全9回の「知られざる海外卓球メーカー図鑑」、第7回は、開発の取捨選択からメーカーの個性をたどります。
この記事でわかること
番号が変わった理由を読むと、自分が欲しい性能も考えやすくなります。ドーネングランツIIIは、無印より何でも優れている?
名前と開発上の関係は、同じとは限らない
ドーネングランツは、公式ではDornenglanzと表記する粒高ラバーです。細長い粒を外側へ向けて打ち、相手の球に応じた変化を使う製品群です。
そのドーネングランツIIIの公式説明は、無印やIIの単純な後継というより、Zeitgeistという別製品の改善版だと位置づけています。IIIという番号を見て想像する関係と、実際の開発説明に違いがあります。
番号が増えたことより、どの性質を変えたかを読む方が、製品の違いを理解できます。 名前だけで順番を付けず、自分が好きだった打球に関わる変更かを確かめましょう。
攻撃を増やす代わりに、変化は控えめに
公式によると、IIIの粒は少し広く丈夫で、摩擦があります。自分から攻撃するプレーを狙う一方、ブロックしたときの変化は無印に及ばないと説明しています。
自分から押したり打ったりする球を増やしたい人には、興味のある方向です。一方、相手のドライブを受ける際の変化を大切にしたい人なら、違う部分に注目することになります。
「新しい方が強い」ではなく、「自分が増やしたい打球に近いか」で読むと、番号の意味が変わります。 これはメーカーが示す設計の読み解きであり、試合での成功率を比較した結果ではありません。
失った性質も読むと違いが分かる
攻撃しやすいという説明に惹かれたら、ブロックの変化をどう説明しているかも確認しましょう。何かを増やす代わりに、別の性質を控える製品もあります。
スピンロードは、ドイツで開発する卓球ブランド
事業の開始と、自社ブランドの開始を分ける
公式の沿革では、マーク・ケーラー氏が2002年末に事業を始め、2009年に自社ブランドと製品開発へ進んだと説明しています。その後、2013年に拠点をドイツのボン近郊、Bornheimへ移しています。
事業を始めた年と、スピンロードの製品開発を始めた年は別です。 2002年という数字だけを見て、同じ年から自社ラバーを開発していたとは読めません。
公式は2026年のサイト刷新にも触れています。製品情報を調べる際には、以前の紹介文だけでなく、現行の公式ページにどんな製品や説明があるかを読むことが役立ちます。
| 年 |
公式沿革にある出来事 |
| 2002年末 |
ケーラー氏が事業を開始 |
| 2009年 |
自社ブランドと製品開発を開始 |
| 2013年 |
Bornheimへ移転 |
| 2026年 |
サイトを刷新 |
ブランドの国と製造国は同じとは限らない
公式はドイツで開発して品質を管理し、製造はドイツ、日本、中国で行うと説明しています。ドイツのブランドだからといって、すべてドイツ製というわけではありません。
たとえばドーネングランツIIIは中国製、後ほど触れる裏ソフトのタヌキIIは日本製と記載しています。製造国を1つにまとめるより、製品ごとの情報を読む方が正確です。
GEWOの選手との共同開発では、選手が求める打球感からラケットを考えました。スピンロードでは、公式がはっきり書く性能上の取捨選択が、メーカーを知る入口になります。
粒高の変化、丈夫さ、自分からの攻撃をどう両立するか
無印の細い粒には、耐久性の制約もある
無印ドーネングランツの公式説明は、細い粒による変化だけでなく、耐久性の制約にも触れています。使う頻度や打ち方まで同じでなければ、どれだけ長持ちするかは一律には決まりません。
強い変化が出るという言葉だけなら、誰でも気になります。しかし、よく練習する人にとっては、扱う際の注意や丈夫さも用具選びの一部です。変化だけを一番に置くかどうかは、プレーする人によって変わります。
メーカーが弱点や条件も書いている箇所は、製品を比べる手掛かりになります。 自分がよく使う打球で、その条件が気になるかを考えられるからです。
IIIのスポンジ入りにも、違う役割がある
ドーネングランツIIIの選択肢は、スポンジなしのOXと1.0mmです。公式は白い柔らかい低速スポンジを使うと説明し、1.0mmをカットでの選択肢としています。その一方、ブロックではOXより変化が弱くなるとしています。
カットは、台から離れて下回転をかけて返す打球です。台の近くで受けるブロックと同じ返し方ではないので、使う場面から仕様を読むことが大切になります。
| 気になること |
公式説明から確かめたい部分 |
| 台の近くでブロックしたい |
無印とIIIの変化の違い、OXかどうか |
| 自分から動かして返したい |
IIIの粒の摩擦と攻撃を狙う説明 |
| 下がってカットもしたい |
IIIの1.0mmが想定する役割 |
| 長く使う条件を考えたい |
無印の細い粒と耐久性の説明 |
試すなら、受ける球と動かす球を分ける
練習で比べるときには、最初からラリーの全部を変えず、相手の同じような球に対して打ち方を分けると観察しやすくなります。まず軽く当てる。次に、自分から押して返す。それぞれの長さや高さを見ます。
浮いた球は打てるけれど、速いドライブを受けると台から出る。逆に、受ける球は収まるけれど、自分から動かすとネットに落ちる。こうした違いが分かれば、次に確かめたい製品説明も具体的です。
一言の感想より、打球と結果を残す
「使いやすい」だけで終わらせず、どんな球に何をしたら収まったかを書いてみましょう。自分に必要な性質が分かると、同じ粒高の説明も読み比べやすくなります。
ブロックの変化と自分からの攻撃。どちらを増やしたいか思い浮かべてみましょう。遅いアンチを、あえて速くしたギガントII
変えたのはトップシートではなくスポンジ
ギガントIIの公式説明には、無印のGigantが遅すぎるという声を受けた開発経緯があります。トップシートは変えず、Marderで使う通常のスポンジへ変更したと説明しています。
遅いアンチは、相手の強い球を短く返したい人には魅力があります。それなのに速くするのはなぜか。公式は、IIで自分から攻める選択を増やした一方、相手の速いトップスピンを極端に短く止めることは難しくなるとしています。
「アンチは遅いほどよい」という1つの基準では、この変更の面白さを捉えられません。 相手の強打を抑えることと、自分から球を進めることのどちらを増やすかが、開発の問いになっています。
回転が少ない球への対応も考える
試合では、相手がいつも強いドライブを打ってくれるわけではありません。ゆっくりした球や、回転の少ない球も来ます。そのとき、自分から深く送りたいのか、短くつなぎたいのかで求める性質が変わります。
速さを抑えることと、次の一球を打ちやすくすることは、同じ目標ではありません。 ギガントIIの開発経緯は、守るラバーにも能動的な打球を増やす選択があると教えてくれます。
この製品には残留摩擦があります。無摩擦のアンチや、粒が外に出ている粒高と同じ構造ではないので、「変化系」という言葉だけで一括りにしないことが大切です。
回転の強い球と少ない球を分けて練習すると、違いを確かめやすくなります。表ソフトと裏ソフトにも、構造を変える面白さがある
マンティコアは、粒の並べ方にも着目
Mantikorの公式説明は、表ソフトのWaranと粒形状とスポンジを共有しながら、横配列から縦配列へ変更したとしています。ゴム配合は、より弾力と回転を重視する方向です。
表ソフト同士でも、粒の形が同じなら同じラバーになるわけではありません。粒をどう並べるか、ゴムの性質をどう組み合わせるかまで設計の対象になっています。
ラバーは、表面とスポンジを別々に見るだけでなく、その組み合わせで読むと違いが見えてきます。 粒高を探して来た人にも、同社がカウンターやブロックを意識した表ソフトを扱うことは新しい発見になります。
タヌキIIは、日本製の攻撃用裏ソフト
タヌキIIの公式説明には、2025年に新しいスポンジを採用したとあります。トップシートはTanuki Proと同じで、日本製、中硬の45度表記のスポンジを使います。
こちらでは弾みが強くなったと説明する一方、速すぎると感じる人もいるとしています。ギガントIIと同じく、弾みが増えたことを無条件の扱いやすさに置き換えていません。
反対面の粒高で相手の球を変え、裏ソフトでドライブを打ちたい。そうした両面の役割を考えると、メーカーの製品群を粒高だけで見るのはもったいなく感じます。
45度はメーカーの表記
硬度の数字だけを他社製品と同じ尺度で比べないようにしましょう。トップシートや弾みの説明も合わせて、自分が扱える速さかを考えることが大切です。
用具を替えたら、よかった打球と調整したい打球を練習後に書き留めてみましょう。ラケットも含めて、自分の得点パターンへ戻る
製品群を並べると、役割が見える
ここまでの製品を、分類と設計上の選択で整理します。メーカーの自己評価点を、他社製品と共通の性能順位に換算した表ではありません。
| 製品 |
分類 |
公式説明で見える取捨選択 |
| ドーネングランツIII |
粒高 |
能動的な攻撃を狙い、ブロック変化は無印より控えめ |
| ギガントII |
アンチ |
速さを増し、極端に短く止める性質は控えめ |
| マンティコア |
表ソフト |
粒配列とゴム配合を変え、弾力と回転へ |
| タヌキII |
裏ソフト |
新しいスポンジで弾みを増やす |
| Ultra Allround |
ラケット |
特殊素材を使わない5枚合板 |
Ultra Allroundの公式説明は、表面にリンバ、中芯にアユース、中間にコトを用いた5枚合板です。特殊素材なしのラケットも扱い、ラバー以外の選択肢もあります。
ラケットを見る際も、バックで受ける球と、フォアで攻める球の両方を考えると判断しやすくなります。 同じブランドでそろえることより、それぞれの面にどんな仕事をさせたいかが先です。
版の違いは、打ちたい球の違いにつながる
III、II、Proなどの表記があるときは、製品名の末尾まで読みます。OXならスポンジなし、スポンジ入りなら厚さも含めて、自分が見ている説明と同じ仕様かを確認します。
銀河の通常版と特注版でも、名前の共通部分だけでは違いを判断できませんでした。紅双喜の用具づくりと比べながら読むと、メーカーごとに製品名と開発の関係があることに気付きます。
スピンロードの説明を読んで残るのは、「全部よくする」以外の開発があるという面白さです。変化を少し控えて攻撃を増やす。遅さを少し控えて自分から送りやすくする。自分が増やしたい打球を考えると、こうした選択の意味が分かってきます。
次の用具を探す前に、今より増やしたい打球と、残したい打球を分けて書いてみてください。 名前の番号を追うだけだった製品選びが、自分の戦い方を考える時間になります。
ラバーから板へ、異なる材料の説明を読む
Ultra Allroundでは、表面のリンバ、中間のコト、中芯のアユースと、木材の位置まで記されています。メーカーの仕様は約82g、打球面155×152mmです。ラバーのトップシートとスポンジを分けて読んだように、ラケットも一枚の板としてではなく、重ねた材料の構成として理解できます。
ゴムの配合を考えるときと、木材の組み合わせを考えるときでは、使う材料が違います。それでも、用具のどの部分を変えたのかを説明から追う楽しさは共通です。特殊素材の有無だけでラケットを覚えるより、各層の位置まで分かる方が、手に持つ用具への関心も深まります。
タヌキIIの日本製表記も、製品単位で読む
タヌキIIでは、日本製という情報に加え、Tanuki Proと共通のトップシート、2025年の新しいスポンジという組み合わせが説明されています。国名だけで製品を覚えるより、何を残して何を変えたかを知る方が、開発の過程を身近に感じられます。
一方、ドーネングランツIIIには中国製という表記があります。同じドイツの開発ブランドの中でも、個々の製品の製造国は異なります。開発するブランドと、製品を作る場所を分けて知ることも、スピンロードを理解する面白さです。
ドーネングランツIIIの公式は、無印やIIだけでなくZeitgeistとの開発上の関係にも触れています。製品名で同じグループに見えることと、開発で何を参考にしたかは、必ずしも重なりません。メーカーの説明を読むと、名前から想像した関係とは別のつながりが見えてきます。
ギガントIIで使うスポンジにも、Marderという別製品の名前が登場します。ラバーを一枚ずつ独立した製品として見るだけでなく、材料が別の製品へつながる様子まで知れるのが面白いところです。
IIIの取捨選択、ギガントIIを速くした理由、タヌキIIのスポンジ変更。製品名の数字の先には、どんな不満へ応えようとしたかという開発者の選択があります。カタログを読む時間が、その選択をたどる時間へ変わります。
よくある質問
Q. スピンロードは粒高だけのメーカーですか?
A. 粒高に加え、アンチ、表ソフト、裏ソフトなども扱います。ラケットにもUltra Allroundのような製品があります。
Q. ドーネングランツIIIは無印の上位互換ですか?
A. 公式はIIIをZeitgeistの改善版と説明し、無印やIIの単純な後継とは区別しています。自分から攻める方向を狙う一方、ブロックの変化は無印に及ばないという説明なので、全面的な上位版とは読めません。
Q. ギガントIIは無摩擦のアンチですか?
A. 公式は残留摩擦があるアンチとして説明しています。無摩擦アンチや粒高の代用品と決めつけず、スポンジ変更による速さと攻撃の方向を読んでください。